天狗トレイル

柔らかい土や落ち葉、時には固い岩と変化に富む地面の感触を足の裏が喜んでいる。山中の冷気は清浄で、走るとたまらなく気持ちいい。
のぼりのきつさにスピードを緩めると冬の立ち枯れが凛として美しい。わずかに緑の葉をつけているのは、スギやヒノキ、モミなど針葉樹やアオキやヤブツバキたちか…

トレイルランニングは、ロードとはことなり、自然の中を走ります。
もちろんアップダウンはきつく、アスファルトとちがって足元は不安定。
ロードの10kmをどんなに早く走れてもトレランの10kmでは同じようには走れません。
過酷であるにもかかわらず、トレイルランナーがどんどん増加しているのは、何と言っても山を走る気持ちよさ、山の変化の楽しさにあります。

環境NGOである私たちが、なぜトレイル大会を主催しているのか?
トレイルランナーたちに、自分たちが走っているフィールドに関心を向け、いつまでも気持ちよく走れるように守っていく視点を持っていただきたいと思ったからです。
ただ早く走りたいだけならロードでいいはずです。トレイルランナーは、山を走りたい人々なのだからきっと山が好きなはず。そんな人たちに、いつも自分がお世話になっている森や山の未来について考えて欲しい!それが高尾山天狗トレイル大会を開催する大きな理由です。

いつも高尾山を走っているけれど、そこにはどんな木々があって、どんな生き物たちが暮らしているのかまったく知らないランナーは、たくさんいると思います。
高尾山は、植物が1321種とその多さは日本一、昆虫は5000種と日本三大生息地の一つ、野鳥は日本にいる鳥の三分の一と出会えます。
これらのたくさんの命の総体が高尾山。
命あふれる山だからこそ、走っても歩いても気持ちいいのです。
気持ちいいと感じる清浄な空気は、木々たちが日々作り出してくれています。足元の柔らかい土は、植物たちと微生物たちが育み、喉をうるおしてくれる天然の湧き水は、高尾山の地層からのプレゼントです。
ランナーが享受するすべてが、山からの贈り物です。

第一回を開催した15年ほど前は、トレランブームはまだ迎えておらず、高尾山の登山客も今ほど多くありませんでした。ランナーが走ってくると登山客たちは「すごい、すごい!頑張って~」と拍手し、ランナーたちも手をあげ笑顔で応えてすれ違ったものでした。
ランナーも登山客も増えてしまった今では、残念ながらそうはいきません。トラブルが増え、お互いのマナーが問われています。
山で出会うと「こんにちは」と必ず挨拶をする習慣に、外国人はよくびっくりします。
満員電車では挨拶なんてできないけれど、山に来るとお互い声を掛け合う。
山は誰のものでもありません。
ランナーも登山客も高尾山の好意に甘えてお邪魔している者どうしのふれあいです。
そんな山の文化もトレイルランナーには知って欲しいと思います。

高尾山天狗トレイル大会は、記録重視の大会ではありません。
スポーツ団体でも山岳団体でもないただの環境NGOが手作りで開催している大会です。
参加賞のTシャツには、いつも「Save Mt. Takao」という言葉が入っています。
山で遊ばせてもらい、帰る時には高尾山への感謝を胸に。
そしていつまでも高尾山の自然が豊かであることを願い、自分にもできることがあれば…と思っていただけたら、スタッフたちは幸せです。

天狗トレイル 公式サイト
https://takaokenju.com/tengutrail/

天狗トレイル 公式ブログ
https://ameblo.jp/tengu-trail/